相続人等に対する株式の売渡請求とは

 今回のコラムでは相続人等に対する株式の売渡請求について解説します。

 相続人が経営に関わってくる?

株主に相続があった場合、株式は相続人に共有されることになります。正確には準共有という状態になりますが、共有とほとんど同じです。
株主には役員の選解任権など会社に対する様々な権利がありますので、相続人に引き継がれることにより、会社の経営に相続人が加わることになります。
例えば、長年の仕事仲間同士であったAB50%ずつ出資して株式会社Xを設立して共同経営していたところ、Bが死亡し、Bの妻C、長男D、長女Eが相続人になったとします。この場合、株主はAと故Bの相続人であるCDEの4名になりますので、株主総会の決議はこの4名が関与して行うことになります。
CDEが経営方針に理解があり、経営能力もあるのであれば問題はありませんが、経営方針に理解がなく齟齬が生じるような場合は会社経営に大きな支障が出ることになります。この場合にAとしてはCDEと話し合って株式を譲り受けるなどできれば問題はありませんが、それも必ずしもスムーズにいくとは限りません。
このような事態を防ぐために、相続人に対して相続した株式を売り渡してもらう相続人等に対する売渡請求制度が設けられています。

 相続人等に対する売渡請求制度

相続人等に対する売渡請求制度とは株主に相続があった場合に、定款であらかじめ定めておけば株式を相続した相続人等に対して株式の売渡しを請求することができます。

相続人等に対する売渡制度が会社法第174条~第177条で定められています。

この制度を使うことにより、株主に相続があっても相続人等から株式を回収して、経営の安定化を図ることが可能となります。

 条件は3つ

この制度を使うためには、以下の条件を満たす必要があります。

①定款に会社が売渡請求ができる旨の内容が定められていること

②当該株式が譲渡制限株式であること

③自己株の取得が財源規制に違反しないこと

 売買価格はどうやって決まるの?

相続人等に対する売渡請求制度を使った場合は株式の価格は会社と相続人が協議して決めることになります。協議が整わないときは会社または相続人等は売渡請求があった日から20日以内に裁判所に対して売買価格の決定の申立てをすることができます。申立てがあったときは裁判所が株式会社の資産状態その他一切の事情を考慮して価格を決めることになります。

 

 

令和5年7月11日掲載

※この記事は掲載時点での法律を前提に作成されております。

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