遺言書があるのに相続登記ができない!?
遺言書があっても相続登記手続きができない?
遺言書で遺産を遺贈するという記載があっても、譲り受けた人が法定相続人以外の場合そのままでは相続手続きができない場合があります。
というのは遺贈の手続きでは遺言書で遺言執行者が指定されていない場合、相続人全員の協力が必要となってしまうからです。
例えば、次のようなケースを考えてみましょう。
Xには生前に絶縁状態にいた息子Yがいましたが、遺産については介護などでお世話になった姪Zに全てを譲りたいと考え、遺言書を作成し姪Zに全て遺贈する遺言書を作成していました。Xには不動産甲があったため、Xが死亡した後、Zはこの遺言書を使って単独で不動産甲の相続登記の申請を法務局にしました。ところが、法務局にこのままでは乙名義に登記をすることはできないと言われてしまいました。
なぜこのケースでは法務局で相続登記の手続きができなかったのでしょうか。
実は法定相続人でに人が遺言書で遺産を譲り受ける遺贈の場合、法務局で不動産の相続手続きをするには法定相続人全員の協力が必要となります。そのため、上記のケースではYの協力が必要となるのです。もしYが協力してくれれば良いのですが、連絡が取れなかったり、協力する気がない場合、名義を変えることができなくなってしまいます。遺贈の登記手続きではYの実印と印鑑証明書が必要となるため、協力的でない場合は手続きが非常に難航することになります。
遺言執行者を指定しておくことが重要
こういった事態を防ぐには、遺言書に遺言執行者を指定しておくという方法があり、遺言執行者を指定しておけば、遺言執行者と受遺者で相続手続きができることになるため、相続人の協力は不要となります。そのため、遺言書で遺贈する場合には遺言執行者を遺言書で指定しておくことが重要となります。上記のケースではXが遺言書で遺言執行者を指定しておけば遺言執行者とZで不動産の登記手続きが可能となりますので、名義変更ができなくなるという事態を防ぐことができたということになります。
家庭裁判所に申し立てることにより遺言執行者を選任してもらうことができる
それでは、遺言書で遺言執行者を指定していなくて法定相続人の協力も得られない場合、遺贈の名義変更手続きは一切できなくなるのかというとそのようなことはありません。
遺言書で遺言執行者が指定されていない場合は家庭裁判所に申し立てることにより、遺言執行者を選任してもらうことができます。相続人が協力してくれず、遺言書にも遺言執行者が指定されていない場合には家庭裁判所で遺言執行者の選任申立てをし、家庭裁判所に選任された遺言執行者と受遺者で相続手続きをするという方法になります。申立手続きの概要は以下の通りです。
遺言執行者の選任申立手続き
管轄
被相続人の相続開始地を管轄する家庭裁判所
申立人
法律上の利害関係人(相続人・受遺者・相続債権者・受遺者の債権者・相続財産管理人・相続人・受遺者の不在者財産管理人など)
申立費用
・収入印紙800円
・家庭裁判所が指定する金額と枚数の郵便切手
・司法書士や弁護士に手続きの依頼をする場合にはその報酬
申立てに必要な書類
・申立書
・遺言者の死亡の記載のある戸籍(除籍・改製原戸籍)謄本(全部事項証明書)
・遺言書の写しまたは遺言書の検認調書謄本の写し
・利害関係を証する資料
・遺言執行者候補者の住民票若しくは戸籍の附票(遺言執行者の候補者を立てる場合)
※参考URL(裁判所のサイトに飛びます)
https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_18/index.html
令和4年4月18日掲載
※この記事は掲載時点での法律を前提に作成されております。
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