遺言書が無効になる?
近年は権利意識の高まりもあり遺言書を作成する人が増えてきていますが、遺言書として法的に認められるためには民法で定められている遺言書の要件を満たしている必要があります。遺言書の要件を満たしていない場合は無効となり、遺言書を使った相続手続きができなくなります。
無効原因は大きく2つあります
遺言書の無効原因としては大きく形式的無効原因と遺言能力による無効原因があります。以下ではそれぞれ解説します。
形式的無効原因
自筆証書遺言を作成する場合、遺言書は全文、日付、氏名を自書し、押印を押さないと無効となります。これらの要件を満たしていない場合は形式的無効原因により無効となります。
日付
遺言書には日付を記載する必要があるため、日付がない遺言書は無効となります。そして、日付は特定されている必要があるため、「令和〇年〇月吉日」という記載の場合は無効となってしまいます。「満80歳の誕生日」や「5月末日」という記載は特定できているため有効となります。
押印
押印がない遺言書も無効となります。ここでいう押印する印鑑は「実印」・「銀行印」・「認印」のどちらであっても問題ありません。また、拇印・指印であっても有効とされています。
※シャチハタは有効?
シャチハタについてはちょっと悩ましいところですが、現段階では一応有効と考えられてはいます。ただし、シャチハタは朱肉ではなくインクが使用されている点や誰でも気軽に利用できて第三者が勝手に押したのではないかと疑義が生じる可能性があるので、おすすめはできません。シャチハタ以外の印鑑を使用するのが良いでしょう。
氏名
遺言書が誰が書いたものか分かるように氏名を自筆で書く必要があり、氏名がない遺言書も無効となります。氏名は遺言者が誰であるか疑いのない程度のもので足りますので、ペンネーム等の通称でもよいとされています(大阪高判昭60.12.11判時1185.115)。
全文自書
自筆証書遺言では全文を自書で書く必要がありますので、自書でない遺言書は無効となります。ただし、平成31年1月13日施行の民法改正により、財産目録についてはパソコンやワープロなどでの作成が認められるようになりました。財産目録の書式については自由とされていますが、財産目録の全てのページ(両面に記載がある場合は両面とも)に署名及び押印をする必要があります。財産目録を作成した場合は本文に「別紙財産目録1記載の財産を長男〇に相続させる」などと記載することができるため、手書きの本文部分の記載が簡便となります。
遺言能力の有無による無効原因
遺言能力とは、遺言の内容及び当該遺言にもとづく法的効果を弁識、判断するに足りる能力のことをいいます。遺言能力がなく作成された遺言書は無効となります。例えば、遺言者が遺言書作成時に認知症等により判断できる状態になく遺言能力が無かったのであれば形式的要件を全て満たしていたとしても遺言書は無効となります。形式的無効原因は遺言書を見れば分かるものとなりますが、遺言能力については遺言書の記載だけでは断定できないものとなるため、遺言能力が無かったことにより無効を主張する場合には遺言者の当時の診療記録など別の証拠で立証する必要があります。
令和4年3月5日掲載
※この記事は掲載時点での法律を前提に作成されております。
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