相続で事業を引き継いだ場合は所得税の手続きも必要になる?

 被相続人(亡くなられた方)が事業を営んでいて相続した場合、所得税の手続きも必要になることがあります。今回のコラムでは事業を相続した場合の所得税の手続きについて解説します。

 新たな事業を開始したと扱われる!

被相続人が事業を営んでいて事業を引き継いだ相続人が事業を営んでいなかった場合、相続人は新たな事業を開始したと扱われます。そのため、相続人は納税地を管轄する税務署長に対して「個人の開業・廃業等届出書」を相続開始日から1カ月以内に提出する必要があります。相続人が事業を営んでいない状態で相続で事業を承継した場合は所得税の手続きも必要ということになります。

もっとも、相続人が相続開始前から事業を営んでいた場合は、新たな事業を開始したことにはなりませんので、改めて届出をする必要はありません。

 納税地はどこになるの?

納税地は所得税の納税地となりますので、相続人の住民票に記載されている住所地が納税地となります。「所得税・消費税の納税地の変更に関する届出書」を提出することにより、相続人の居住地又は事務所、事業所の所在地のいずれかに変更することも可能となっています。

 青色申告をしましょう!

被相続人から事業を承継して初めて事業を営むことになり所得税の手続きも必要になった場合、様々な特典がある青色申告をすることをお勧めします。

青色申告を行うと次のような特典があります。

①青色申告特別控除

不動産所得又は事業所得を生ずべき事業を営んでいる場合最高55万円(令和元年以前は最高65万円)を控除することができます。

※所得に係る取引を正規の簿記の原則により記帳し、それに基づいて貸借対照表等を作成し確定申告書に添付して法定申告期限内に提出する必要等、一定の条件を満たす必要があります。

上記以外の青色申告者についても不動産所得、事業所得及び山林所得を通じて最高10万円の控除を受けることが可能です。

②青色事業専従者給与

「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出し、届け出た金額の範囲内での給与の支給をすれば、事業専従者への給与について全額必要経費に算入することができます。

③純損失の繰越しと繰戻し

事業所得などに赤字の金額ある場合、その赤字を翌年以後3年間にわたって繰り越して各年分の所得金から控除できます。※一定の条件を満たす必要があります。

 

詳しくは下記国税庁のサイトをご参照ください。

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2070.htm

 

被相続人の青色申告承認の効果は引き継がれません!

様々な特典のある青色申告ですが、青色申告をしたい場合は納税地の所轄税務署長に青色申告の承認申請をする必要がります。

ここでの注意点としては、被相続人が青色申告の承認を受けていたとしても相続人にはその効果は引き継がれないということです。そのため、新たに事業を始めた相続人が青色申告の効果を受けるためには相続人自ら新しく青色申告の承認申請を行う必要があります。青色申告の承認申請をしていないと青色申告の特典を受けられませんので青色申告をしたい場合は注意しましょう。

 

令和3年11月27日掲載

※この記事は掲載時点での法律を前提に作成されております。

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