戦前の戸籍を読むには編製原因と削除原因が重要?

 相続手続きでは相続人を確定させる必要があるため、被相続人(亡くなられた方)の出生から死亡までの全ての戸籍が必要となります。そして、戸籍は編製原因(戸籍が新しく作られることになる原因)と削除原因(戸籍が削除される原因)によって新しく作り替えられたり削除されるため、編成原因と削除原因を見て取得した戸籍がいつからいつまでのものかを判断することになります。ところが、戦前の戸籍である旧法戸籍(明治31年式・大正4年式)は現行の戸籍と編製原因も削除原因も異なります。そのため、旧法戸籍を読み解くには旧法戸籍の編製原因と削除原因を分かっておく必要があります。

今回のコラムでは旧法戸籍(明治31年式・大正4年式)の編製原因と削除原因について解説します。

 旧法戸籍の編製原因と削除原因

旧法戸籍を取得していつからいつまでのものであるかを判断する際に気を付けないといけないことが上述したように旧法戸籍と現行戸籍とでは編製原因と削除原因が違う点です。編製原因と削除原因が分からないと取得した戸籍がいつからいつまでのものであるかの判断を誤ってしまうことになります。

 旧法戸籍の編製原因と削除原因は以下の通りとなります。

 旧法戸籍(明治31年式・大正4年式)の新戸籍編製原因

①家督相続(戸主の相続)

②戸籍の改製

③他市町村からの転籍

④分家(当事者の意思による家の設立)

⑤一家の創立(法定の原因による家の設立)

⑥廃家または絶家の再興(当事者の意思による家の設立)

 

②戸籍の改製と③他市町村からの転籍は現行戸籍でも同じ編製原因ですが、①家督相続⑤一家の創立⑥廃家または絶家の再興は現行戸籍にはない編製原因となっています。戦前の旧民法は家制度であったため、旧民法に基づいている旧法戸籍でも家制度の影響は強く受けています。家督相続や一家の創立、廃家、絶家の再興などは現行戸籍では見られないものですが、旧法戸籍は家制度に基づいていたのでこのような編製原因が存在します。

旧法戸籍(明治31年式・大正4年式)の戸籍削除原因

①家督相続(戸主の相続)

②戸籍の改製

③他市町村への転籍

④廃家(家の消滅)

⑤絶家(家の消滅)

⑥嫡出でない子が母の家に入ることができないため一家創立後に父の認知により父の家に入った(家の消滅)

 

②戸籍の改製③他市町村への転籍は現行戸籍でも同じ削除原因になりますが、①家督相続④廃家⑤絶家⑥嫡出でない子が母の家に入ることができないため一家創立後に父の認知により父の家に入ったは現行戸籍にはない削除原因となっています。戸籍の削除原因についても編製原因と同じように、家制度であった旧民法の影響を受けて現行戸籍にはない削除原因が存在しています。

 旧法戸籍を読み解くとは編製原因と削除原因を分かっておくことが重要!

旧法戸籍を取得して被相続人の出生から死亡までの戸籍を読み解くときはこれらの戸籍の編製原因と削除原因にあたるものを見つけて戸籍の始まりと終わりを読み解いていくことになります。相続の手続きでは出生から死亡までの戸籍が間断なく続いている必要がありますので、編製原因と削除原因に気を付けながら読み解いていくことが大切です。戸籍が不足していることが後で発覚し、相続人の確定が間違っていたということになるとその後の遺産分割も無効ということになりかねません。戸籍を揃える際に旧法戸籍が出てきたときは戸籍の編製原因と削除原因に気を付けて戸籍が全て揃っているか間違わないようにくれぐれも気を付けましょう。

 

令和3年10月28日掲載

※この記事は掲載時点での法律を前提に作成されております。

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