遺産分割協議書は公正証書で作成した方が良い?

相続手続きでは相続人の全員の合意に基づいて作成した遺産分割協議書を作成することが多いですが、この遺産分割協議書は公正証書で作成した方が良いのでしょうか。今回のコラムでは遺産分割協議書は公正証書で作成した方が良いのかについて解説します。

公正証書とは

公正証書とは公証役場で作成するもので、公証人法に基づき法務大臣に任命された公証人が作成する公文書です。公証人は裁判官や検察官などを長年務められて選ばれた法律のプロです。その法律のプロである公証人が作成した公正証書には証拠力、確定日付の効力、執行力があり、通常作成された契約書よりも非常に強い効力があります。例えば、金銭債務で債務者が支払いを滞った場合、通常であれば裁判をして確定判決を取るというプロセスを経る必要がありますが、公正証書で「金銭執行認諾条項」を定めておけば、裁判で確定判決を受けないで直ちに給与や口座などの強制執行の申立てをすることができます。裁判は多大な時間と労力を伴うことが多いですので、その裁判のプロセスを省略できるのは公正証書を作成する大きなメリットとなっています。

遺産分割協議書は公正証書で作成した方が良い?

上述のように公正証書には強い効力が認められていますが、公正証書を作成するにはある程度の手間と費用がかかります。そこまでの手間と費用をかけて公正証書にする必要があるかという点がポイントになりますが、相続人間に争いのないときに作成する遺産分割協議書は公正証書の効力が必要になるケースはあまりありません。そのため、一般的には遺産分割は公正証書にする必要はないでしょう。もっとも、公正証書にする必要が全くないというわけではありません。公正証書は裁判のプロセスを省略して強制執行ができるという点が大きなメリットですので、すぐに強制執行ができる状態にしておく必要がある場合には公正証書にするメリットがあるといえます。例えば、A,B,Cと相続人がいて、Aが不動産を取得し、B,Cは代わりに代償金としてAから金銭を受け取るという遺産分割をするケースを考えてみましょう。このケースでAの支払いに不安が残る場合、Aの支払いについて強制執行認諾条項を付した公正証書を作成しておくと、万が一Aの支払いが滞った場合でも裁判のプロセスを経ずに強制執行ができるので、公正証書にするメリットがあるといえるでしょう。このようなケースの場合であれば遺産分割協議書を公正証書にすることも検討した方が良いと言えるでしょう。

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