特定遺贈の登記手続きに関する詳細ガイド
遺産相続において、遺言書により特定の財産を法定相続人以外の特定の人物に遺贈することは珍しくありません。このような「特定遺贈」によって不動産を取得する場合、その所有権の移転を正式に行うために必要な手続きが「遺贈登記」です。本記事では、特定遺贈の登記を検討している方々に向けて、その手続き方法や必要書類、関連費用について詳しく解説します。
特定遺贈とは?
遺言書に基づき、遺言者が特定の財産を特定の人物(受遺者)に無償で譲渡する行為を「特定遺贈」と言います。例えば、遺言者が自宅をAさんに遺贈するとして遺言書を残していた場合、その自宅がAさんに遺言書によって譲渡されることになります。
特定遺贈は、相続とは異なる点が多くあります。特に相続の場合は、法定相続人が相続財産を取得するのに対し、特定遺贈では遺言者が指定した人物がその財産を取得します。このため、受遺者は遺言者の意向に基づき財産を受け取る権利を有しますが、これを第三者に対抗するためには「遺贈登記」が必要です。
遺贈登記とは?
遺贈登記は、不動産の所有権を遺言者から受遺者に移転するために行う登記手続きです。この登記を行わなければ、受遺者はその不動産を正当に所有しているとして法的に第三者に対抗することができません。したがって、遺贈によって不動産を取得した場合は、速やかに登記手続きを行うことが重要です。
遺贈登記の手続き
1.遺言書の確認と検認
まず、遺贈登記を行うためには、遺言書の内容を確認します。遺言書が公正証書で作成されている場合は、家庭裁判所での検認手続きは不要です。しかし、自筆証書遺言や秘密証書遺言の場合は、家庭裁判所での検認手続きが必要となります。
2.遺言執行者の確認
遺言書に遺言執行者が指定されているかどうかを確認します。遺言執行者が指定されている場合、遺贈登記の申請は受遺者と遺言執行者が共同で行います。遺言執行者がいない場合は、相続人全員が登記申請に関与する必要があります。
3.必要書類の準備
遺贈登記には、以下の書類が必要です:
・遺言書(公正証書遺言または検認を受けた遺言書)
・遺言者の死亡を証明する戸籍謄本(除籍謄本)
・受遺者の住民票
・登記済権利証または登記識別情報
・最新年度の固定資産評価証明書
・遺言執行者の印鑑証明書(遺言執行者がいる場合)
・相続人全員の戸籍謄本および印鑑証明書(遺言執行者がいない場合)
4.登記申請の方法
申請人:
遺贈登記は、通常、受遺者と遺言執行者が共同で法務局に申請します。遺言執行者がいない場合は、相続人全員が申請者として手続きを行う必要があります。
法務局:
不動産の所在地を管轄する法務局で申請書や必要書類を提出して登記手続きを行います。
遺贈登記にかかる費用:
遺贈登記には、以下の費用が発生します。
①登録免許税
登録免許税は、不動産の評価額に基づいて計算されます。相続の場合、税率は1000分の4ですが、受遺者が相続人でない場合は1000分の20となります。ただし、受遺者が相続人である場合は、1000分の4の税率が適用されます。この税率の適用を受けるためには、受遺者が相続人であることを証明する戸籍謄本を提出する必要があります。
➁実費
戸籍謄本、印鑑証明書、住民票などの取得費用が含まれます。これらの費用は数千円から1万円程度です。
③司法書士の報酬
登記手続きを司法書士に依頼する場合、報酬額は不動産の金額や数、状況、依頼内容によって異なりますが、登記のみの依頼の場合は10万円~20万円前後になることが一般的です。
まとめ
特定遺贈における登記手続きは、相続登記とは異なり、慎重かつ迅速な対応が求められます。遺贈登記を検討している方は、早めに近くの司法書士に相談し、適切な手続きを進めることが重要です。遺言書の内容や受遺者の状況によって必要な手続きや書類が異なるため、専門家のアドバイスを受けることで、トラブルを避け、スムーズに遺贈手続きを完了させることができます。
令和6年8月29日掲載
※この記事は掲載時点での法律を前提に作成されております。
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