前回までのコラムでは相続財産の処分にあたる行為について紹介しました。今回のコラムでは法定単純承認としての熟慮期間について紹介します。

熟慮期間

相続放棄は「3ヵ月以内」に申述しなければならす、3ヵ月の期間が経過してしまうと自動的に単純承認したことになり、負債も資産も全て強制的に相続されることになります。負債があった場合は相続人となった人は相続した負債を支払わなければならなくなります。

上記の「3ヵ月」の期間は、単純承認か相続放棄かを選択できる「熟慮期間」と呼ばれています。

それでは、熟慮期間が3ヶ月としてどのタイミングから「3ヵ月」をカウントするのでしょうか。次に熟慮期間の「起算点」についてご説明致します。

熟慮期間の起算点

相続の放棄ができる期間は民法で決まっています。民法では、次のように規定されています。

民法第9151

相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。

ここで大切なのは「自己のために相続の開始があったことを知った時」とはいつのことを指しているのかという点です。この点について最高裁の見解をご紹介します。

最高裁の見解

最高裁判所によると、「自己のために相続の開始があったことを知った時」とは、単純に被相続人が死亡したときではなく、原則として被相続人の死亡を相続人が覚知し、自己に相続権があることを知ったとき、とされています(最判昭和59427日民集386698頁参照)

このように解釈されているのは、上記の事実を知ったときに、相続人が被相続人の相続財産の調査をしてその状況を把握することができ、それをもってはじめて、相続の承認・限定承認・放棄のいずれかの意思の決定をすることができるからです。

民法では相続人は民法第9152項によって「相続の承認又は放棄をする前に、相続財産の調査をすることができる」と規定されています。最高裁は上記事実は知ったときであれば原則として3ヶ月以内に相続財産の調査をして相続放棄をするか、相続するかの判断ができると考えていると思われます。

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