相続放棄と法定単純承認③
法定単純承認の1つである相続財産の処分と保存行為についてご紹介しました。今回のコラムでは相続財産の処分にあたるものをご紹介します。
相続財産の処分とは
相続財産の処分とは次の条件をすべて満たすものをいいます。
①処分した物が財産的価値を有すること
相続したものについての全ての処分が「相続財産の処分」にあたるわけではありません。明らかに財産価値のないゴミや売却が困難な中古品等を処分しても「相続財産の処分」にはあたりません。
②自分が相続財産を取得する立場にあることを知っていること
自分が相続人であることを知らずに処分行為を行った場合、「相続財産の処分」にはなりません。
③相続財産についてその所有者でなければできない行為をする
遺産分割協議、預貯金の解約・消費、相続財産の売却や建物の取壊し、廃車、各種契約の契約内容の変更等相続財産についてその所有者でなければできない行為をすると「相続財産の処分」となります。
ただし、それが被相続人の葬儀費用・仏壇購入等の支払いのためにされたものである場合は、預金を解約して使用しても、「相続財産の処分に該当しない」とする裁判例があります。
相続財産の処分にあたる行為の具体例
相続財産の処分にあたる行為の代表的な具体例としては以下のものがあります。
①相続人間での遺産分割協議
相続人間で遺産分割協議を行い、相続財産の帰属先を決定する行為は「相続財産の処分」に当ります。相続放棄をするのであれば他の相続人から遺産分割協議書に捺印を求められても捺印してはいけません。
もっとも、遺産分割協議の段階で被相続人に債務があることが明らかになっておらず、もし相続債務の存在を知っていれば最初から相続放棄を選択していたであろう場合は、遺産分割協議を行ったとしても「相続財産の処分に当らない」とする裁判例が存在します。
② 相続債権の取り立て・収受領得する行為
相続開始後に、相続放棄の申述をしてそれが受理される前に、相続人が、被相続人の有していた債権を取立てて、これを収受領得する行為は「相続財産の処分」にあたります。相続財産に関する訴訟を提起することは、処分行為にあたります。ただし、相続財産である債権について、相続人が債権者に対し、請求・催告するのは時効中断の効力があり、保存行為といえるので、処分行為にはあたりません。
相続放棄でお困りのときは専門家に相談しましょう
相続放棄のことでお困りの場合は、まずは相続放棄に強い弁護士、司法書士等の専門家に相談しましょう。相続放棄のことを熟知していますので、必ず役に立つアドバイスがもらえます。
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