相続放棄の撤回・取消しはできる?
相続放棄の撤回・取消し
家庭裁判所に相続放棄の手続きが終了し、無事受理もされあとに相続放棄を撤回または取り消すことはできるでしょうか。今回は相続放棄の撤回・取消しについて書いていきたいと思います。
相続放棄の撤回・取消しについては民法に規定があります。
以下の条文は相続放棄の撤回・取消しについて規定されている民法第919条の第1項と2項です。
民法第919条(相続の承認及び放棄の撤回及び取消し)
相続の承認及び放棄は,第915条第1項の期間内でも,撤回することができない。
2 前項の規定は,第1編(総則)及び前編(親族)の規定により相続の承認又は放棄の取消しをすることを妨げない。
条文中に書かれている第915条第1項というのが相続放棄できる期間(3ヶ月)を定めたものですので、たとえ3ヶ月以内という相続放棄できる期間内であっても相続放棄は撤回できない、という意味になります。
相続放棄は一度裁判所で受理されてしまいますと撤回ができません。
取消しは一定の場合には可能
上述したとおり相続放棄の撤回はできませんが、上記の民法919条の2項では取消しができると書かれており、一定の場合には取消しが可能です。一定の場合とは主に以下のような場合です。
【相続放棄の取消しができる場合】
・相続放棄が詐欺や脅迫などによって行われた場合(民法96条)
・未成年者が法定代理人の同意なく相続放棄をしてしまった場合(民法5条)
・成年被後見人が相続放棄をしてしまった場合(民法9条)
・被保佐人が保佐人の同意なく相続放棄をしてしまった場合(民法13条)
・後見監督人が付いているにもかかわらず、後見人が本人を代理して相続放棄をしてしまった場合(民法864・865条)
上記の場合には相続放棄の取消しができます。
取り消しをする場合には家庭裁判所で手続きを行うことになります。ただし、取り消しの手続きは、いつでもできるわけではなく期限があるので注意しましょう。追認できる時点(騙されていたと気付いたときや未成年者が無断で相続放棄が行っていたことを知ったときなど)から6ヶ月を経過した場合は、時効によって取消権が消滅するので取消しができなくなります。また、相続放棄をしてから10年が経過した場合も同様で、取消権は消滅して取消しができなくなります。
相続放棄申述の受理前であれば取下げができる
上述したとおり、相続放棄が受理されてしまうと、原則として撤回や取消しをすることはできません。これに対して相続放棄が受理される前であれば取下げることができます。
この場合は速やかに家庭裁判所に連絡をして取下書を提出しましょう。