生前の相続放棄
相続放棄とは、被相続人(亡くなられた方)のプラス財産・マイナス財産のすべてを放棄し、すべての財産を相続しないことをいいます。被相続人に借金などの負債が多いときに利用されます。
相続放棄は通常相続発生後に行います。
しかし、
①親に借金があり相続したくないので今のうちに相続放棄をしておきたい。
②妻にはたくさん世話になったので、他の相続人には相続放棄をしてもらいたい。
など生前のうちに相続放棄をしたいという方も多いでしょう。
生前の相続放棄はすることは可能でしょうか。
生前に相続放棄することはできない
結論から申しますと生前に相続放棄をすることはできません。相続放棄は「相続」を「放棄」する制度で、相続が発生したあとに行うものであり、相続が発生する前の段階では認められていません。仮に生前から「相続を放棄します」といった内容を書いた念書や契約書を作成したとしてもそれは法的には無効となります。
それでは将来相続放棄をしたい場合でも生前にできることはないのでしょうか。
完全ではありませんが、他の制度を利用する方法である程度の対策をすることは可能です。以下では3つの方法を紹介します。
遺言書を作成する
まず、第一の対策は遺言書を作成することです。こちらは将来相続が起こったときに相続させたくない人がいるときに有効な対策です。相続させたくない相続人以外の人に相続または遺贈するという内容のものを作成します。
遺言には自分で作成する自筆証書遺言と公証役場で作成する公正証書遺言がありますが、自筆証書は書き方を間違えると無効になることもあるので、公正証書遺言で作成することをおすすめします。
遺言書の詳細についてはこちらをご覧ください。
但し、遺言書を作成しても遺留分を侵害することはできません。遺留分対策としては下記の遺留分の放棄が有効です。
遺留分の放棄は生前でもできる
遺留分とは、民法で定められている一定の相続人が生活に支障をきたさないようにするため保障をしてくれる最低限相続できる財産のことです。相続放棄は生前にすることはできませんが、遺留分は生前でも放棄することができます。
但し、遺留分を放棄するには必ず家庭裁判所の許可を取らなければならず、家庭裁判所での手続きが必要になります。
債務整理
最後にご紹介するのは債務整理をして負債を相続人に残さないという方法です。債務整理とは債権者(銀行や消費者金融など)と直接交渉を行ったり、裁判所を通した手続きにより借金を減額する等の方法により借金を返しやすくする方法です。債務整理をして生前に借金を返すことにより負債を相続人に残さないようにします。債務整理には主に任意整理、個人再生、自己破産、過払い金請求という4つの方法があります。
任意整理 | 債権者との交渉により利息カットや返済期間の見直しを行う。 |
個人再生 | 裁判所を介した手続きで大幅な借金の減額が可能。 |
自己破産 | 裁判所を介した手続きで返済の義務を免れることができる。 |
過払い金請求 | 過去に払い過ぎた金利などを返還する手続き。 |
しかし、債務整理は本人が行うものなので、本人にその意思がなかったり、余命がもう短い場合にはこの方法は取ることができません。
まとめ
上述の通り現行の制度では生前の相続放棄は認められていません。そのため、上記のような別の制度を使う方法で対策することになります。
生前の対策については専門的な知識が必要となりますので、ご検討されている場合には相続に詳しい専門家に相談することをおすすめします。
当事務所でも生前対策についての無料相談を随時受け付けておりますので、お気軽にお問合せください。